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日本の立ち位置

―靖国問題解決に向けて(8)―



許しの心を示した漆間時国


許しの心とは何かを考える上で、いつも脳裏に浮かぶのは、浄土宗の開祖、法然上人の父で、美作国(みまさかのくに・現在の岡山県北東部)の押領使(注1)であった漆間時国(うるまのときくに)です。

時国の長男であった勢至丸(法然上人の幼名)が9歳の時、以前から不仲だった稲岡荘の預所・明石定明(あかしさだあき)の軍勢によって屋敷を夜襲され、時国は重症を負い、いのちを落としてしまいます。

仇討ちが当たり前だった時代ですから、当然勢至丸も、幼心に父の仇討ちを誓ったに違いありませんが、それを思い留まらせたのは時国自身でした。

時国は、勢至丸を臨終の床に呼び、「私がこうしていのちを落とすのも、宿世の因縁である。お前が、相手を怨み、仇を討てば、末代までも報復は繰り返され、子々孫々を苦しめることになる。お前が私の救いを願うのであれば、仇討ちを止め、仏道に入って私の菩提を弔って欲しい」と遺言して亡くなります。

勢至丸は、父の遺言に従って比叡山へ上り、やがて浄土宗の開祖、法然上人となって、苦しむ人々を救済するのです。

「この父にしてこの子あり」とはまさにこの事で、漆間時国が勢至丸を仏道に導き、悪しき因縁を解いたからこそ、後の法然上人が誕生したのです。

もしこの時、勢至丸が父の仇討ちをしていれば、仇を討たれた相手の子も、また勢至丸を父の仇として怨み、輪廻の業の連鎖が、子々孫々を末代までも苦しめたに違いありません。

夜襲を受けて命を落とすのも、自らが作った宿業であり、報復の連鎖を勢至丸に背負わせてはならないという時国の悟りが、勢至丸を救い、仇となる相手の子孫をも救ったのです。

表面的に見れば、時国だけが犠牲となり、余りにも不公平であるかのように見えますが、時国の犠牲があったからこそ、輪廻の業の連鎖が解け、勢至丸も相手の子も、そして双方の子々孫々までもが救われたのです。

時国が相手を許し、自ら犠牲となった事で、輪廻の業の連鎖が解け、更に多くの人々を怨念の連鎖から救ったのですから、その功徳は計り知れません。

相手を許し、犠牲となった時国は、勢至丸を仏道に導き、その因縁を解く為に、仮に父として生まれてきたみ仏の化身だったのかも知れません。


許しに条件はない


改めて言うまでもありませんが、時国が宿敵の明石定明を許したのは、定明が時国の怨念を恐れてお寺を建てたり、菩提を弔ったからではありません。

これは、定明の行動がどうであったかに拘らず、時国自身の仏教への篤い信仰心と悟りによるものです。

もし明石定明が菩提を弔ってくれたから許したのであれば、時国は、ただ供養の見返りとして許したに過ぎません。

そのような条件付の許しは、条件が破られれば、いつでも怒りや恨みに変わる恐れがありますから、真実の許しとは言えません。

時国が身を以て示したのは、相手の行為如何によって変わる事のない無条件の許しであり、真実の許しです。

では、やむなく国を譲ったとされる大国主命はどうだったのでしょうか?武力を誇示して強引に国譲りを迫った天照大御神を無条件に許せたのでしょうか?

思うに、神話の時代には、まだ仏教が存在していませんから、大国主命が仏の教えに触れる機会はなく、無条件に許せたかどうかは分りません。

また「神の柱」一本だけでは、骨肉の因縁を解く事が出来ず、日本民族の繁栄もおぼつかなかったかも知れません。

しかし、幸いにして、仏教が日本に伝えられて以来「神と仏の二本柱」がわが国の在るべき姿となり、歴代政権がその立ち位置を崩すことなく守り続け、子々孫々へと伝えてきました。

『神仏分離令』によって仏教が排斥された悲しい一時期はありましたが、仏教伝来以来、わが国が「神と仏の二本柱」を守り続けて繁栄してきた経緯を考えれば、天照大御神に対する大国主命の怨念はもはや消えていると言ってもいいのではないでしょうか。


「国譲り神話」から見えてくる不変の立ち位置


国譲りによって、天照大御神とその一族は、国を奪われた大国主命とその一族の思いにどう応えるかという重い責務を負った事になりますが、天照大御神は、彼らの思いに対し、出雲大社を建て、その御霊を神として祀る事によって応えようとしました。

しかし、先ほども言ったように、神には許しの教えがありませんから、神として祀られても大国主命の怨念が晴れる訳ではありません。

怨念が晴れるのは、神として祀られた時ではなく、許しの心を説くみ仏の教え(仏法)に触れた時であり、それ以外にはありえません。

繰り返し申しますが、「国譲り神話」にまつわる骨肉の争いの因縁は、仏法に依らなければ未来永劫解決しません。

つまり、「国譲り神話」は、複雑に絡み合った骨肉の因縁が、仏法によって解かれる事を前提としていると考えなければ成り立たないのです。

そればかりか、もし「神と仏の二本柱」というわが国繁栄の不変の立ち位置を踏み外せば、その基礎が崩れ、日本の国そのものが成り立たなくなる恐れが出てきます。

その好例が、明治政府によって断行された『神仏分離令』と、それに伴い全国に吹き荒れた廃仏毀釈運動の嵐です。

この政策によって「仏の柱」が取り外され、不変の立ち位置が変えられてしまった結果、わが国に、戦争から敗戦へと向かう衰退の流れが生まれ、国家存亡の危機的状況へと一気に加速していった事は、すでにご承知の通りです。

最初に、日本が末代までも繁栄していく為には、「神と仏の二本柱」を持たなければならないと言いましたが、「仏の柱」を取り外せばどうなるかを教えてくれたという意味においては、明治政府に感謝しなければならないでしょう。

要するに、わが国には、蓮華の台座に象徴される許しの心を持つみ仏のお力が絶対に必要であり、「神の柱」だけでは、到底、大国主命やその一族の怨念を鎮められないばかりか、日本民族そのものの繁栄もあり得ないのです。

勿論、その逆も然りで、神の柱を取り外し、仏の柱だけにしても、わが国の繁栄は望めません。

同じ事が、靖国問題の解決に向けても言えます。

そして、この立ち位置は、靖国問題の解決のみならず、わが国が末代までも繁栄していく為に絶対に変えてはならない不変の立ち位置であり、子々孫々に語り伝えていかなければならない国家繁栄の礎である事を決して忘れてはならないのです。

合掌

2016年5月22日


日本の立ち位置ー靖国問題解決に向けて(1)
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(注1)平安時代、国内の治安維持のため、諸国に設置された地方警察のような官職。その国の国司が兼務したり、土地の有力豪族が任命され、暴徒の鎮圧や盗賊の逮捕などにあたった。

 

 

 

 

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