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幸不幸を分ける「当たり前」の基準(1)─新型コロナウイルス感染症に寄せて―大自然の生き方に学ぶ今年は、温暖化の影響からか、梅や桜が例年より早く開花し、花見の時期も例年より早まりましたが、毎年この時期になると、開花の時期をめぐって一喜一憂する人々を、よく見かけます。 大勢の人に花見を楽しんでもらおうと「桜祭り」を企画したり、花見客を当てにして商売をしている人々にとって、開花の時期がいつになるかは切実な問題です。しかし、大自然は、そんな人間の都合などに一切頓着していません。 暖かければ暖かいように、寒ければ寒いように天地の営みに従って、在るがままを生きている姿は、まさに変幻自在、融通無碍と云っていいでしょう。 わたしなどは、開花が早かろうが遅かろうが、それもまたその時々の御縁であり、大自然との出逢いですから、その御縁を有り難く受け止めればいいと思うのですが、人は、やはり満開の桜を見たいのです。しかも、自分にとって都合のいい日に満開になって欲しいのですから、自分勝手という他はありません。 しかし、人間に都合があるように、桜にも桜の都合がありますから、人間の都合通りには咲いてくれません。 勿論、桜は、人間を困らせたり、悲しませようとして早く咲いたり、遅く咲いたりしているわけではなく、ただ大自然の流れに従って、在るがまま咲いているに過ぎません。 桜も大自然の一部ですから、大自然の摂理に逆らって生きることは出来ないのです。 人間も桜と同様、大自然の一部に過ぎませんから、大自然の摂理に従って生きる以外に道はありません。 「ポツンと一軒家」の人々戦後の焼け野原から立ち上がり、いまや世界第三位の経済大国と言われるまでになった日本ですが、そんな日本にも、大自然の営みに従って、在るがまま心豊かに暮らしている人々がいます。 所ジョージさんと学習塾講師の林修さんがメインキャスターを勤める『ポツンと一軒家』というテレビ番組で紹介された人々ですが、ご覧になったお方もいると思います。 グーグルアースで、周りに集落のない山奥の一軒家を探して、そこに住む人たちの生活ぶりを取材したり、話を聞いたりする番組ですが、人里離れた山奥の一軒家ですから、家が建っている場所も、急斜面であったり、離れ小島であったり、獣道しかないような場所に家を建てて、お野菜や山菜や果物を作ったり、しいたけ栽培をしながら生計を立てているのです。 勿論、この人たちには、大自然をどうこうしようという気持ちは全くありません。大自然の営みに逆らっていては生きていけませんから、大自然の営みに従い、大自然と共に生きているのです。 都会で生活している人間から見ると、山奥の一軒家で暮らすのは、さぞ不便で大変だろうと想像しがちですが、先祖代々、その土地で大自然と共に暮らしてきた人たちにとっては、それが昔から営んできた当たり前の生活ですから、不便とは感じていません。 都会で暮らしている老人の中には、介護施設に入ったり、病気ばかりして入退院を繰り返している人も大勢いますが、山奥の一軒家で暮らすお年寄りはみな、介護施設とは無縁と思えるほど元気な毎日を過ごしています。 百歳間近のお年寄りでさえ、元気に畑仕事をしたり、草引きをしたりしながら、毎日、精力的に体を動かし、懸命に働いているのです。 こんな人たちの姿を見ていると、人間にとって本当の幸せとは何かを、つくづく考えさせられてしまいます。 世界に蔓延する新型コロナウイルス昨年12月、中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症は、瞬く間に中国全土に広がり、中国から更に世界中へと広がって、世界各国で大勢の感染者や死者が出る事態となり、いまや全世界がパンデミック(世界的大流行)状態に陥り、連日多くの犠牲者を出していることは、周知の事実です。 アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の調査によれば、4月30日現在、ウイルス発生国の中国国内での感染者数は8万3944人、死者も4512人を越えていますが、世界各国での感染者と死者の数は、更に深刻さを増しています。 中国以外で感染が確認された国と地域は185に及び、感染者は、アメリカ合衆国の103万8451人を筆頭に、スペイン23万6899人、イタリア20万3591人、フランス16万6543人、イギリス16万6441人、ドイツ16万1539人、トルコ11万7589人、ロシア9万9399人、イラン9万3657人、ブラジル7万9361人を数え、以下、カナダ、ベルギー、ニュージーランド、ペルー、インド、スイス、エクアドル、ポルトガル、サウジアラビヤなどと続いています。 日本は、感染者1万3895人、死者413人を数えていますが、全世界の感染者は、すでに319万1827人に達し、死者も22万7535人となっており、2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)での感染者8273人、死者774人と比べると、すでに感染者数で385倍、死者数で293倍を記録し、現在も増え続けていて終息する気配がまったく見えません。 すでに、経済活動や社会活動をはじめ、私たちの日常生活に数々の影響が出てきており、今後更にこの状態が長引けば、その悪影響は計り知れず、2021年に延期された夏の東京オリンピックの開催さえ危ぶまれ事態となるかも知れません。 新型コロナウイルスの発症国である中国の武漢市にある某ウイスル研究所から漏れ出たのが原因との情報もありますが、真偽のほどは別にして、結果として世界中の人々を死の淵に陥れている今回の中国発新型コロナウイスル感染症が、人類にとって最悪の疫病神であることは間違いないでしょう。 しかし、「吉凶禍福はあざなえる縄の如し」と言われるように、この度の未曾有の災難を、ただ疫病神としてのみ捉えるのではなく、人類全体の生き方を根本的に見つめ直し、人間本来の生き方に目覚める好機と捉えれば、そこに福の神の顔が見えてくるのではないでしょうか。 マスコミの責任と在るべき使命当初、話題になったクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」での感染は、1月20日に横浜港から出航したクルーズ船に乗った香港の80歳の男性が感染していたのが発端で、1月25日に香港で下船した後、感染が確認されました。 この香港の男性は、1月10日に中国の広東省を訪れ、17日に飛行機で来日し、20日に横浜港からクルーズ船に乗った時は、すでに咳の症状が出ており、中国国内でウイルスに感染したまま乗船したことは間違いありません。 クルーズ船に乗った後、さらに症状が悪化したにも拘らず、25日まで乗船を続け、その間に、鹿児島でバスツアーに参加するなどしたため、一緒にバスツアーに参加した他の人たちにも感染し、その人たちから更に、クルーズ船内の他の乗客に感染が一気に拡がっていったものと考えられます。 クルーズ船という狭い空間に3700人もの人たちが滞在していた上に、潜伏期間が二週間と長く、すぐに症状が出てこないため、感染していても気付かない人が多く、潜伏期間の二週間の内に感染が雪だるま式に拡大し、日本へ寄港した時には、無症状の人も含めて、かなりの人が感染していたに違いありません。 検査した結果、感染の深刻さが次第に明らかになり、出来るだけ乗客同士が触れ合わないようにとの配慮から、船室に止まってもらうという判断がなされましたが、この判断に、一部から批判の声があがっていました。 しかし、もし潜伏期間内に、これ以上乗客同士が触れ合ったり、下船させれば、それこそ感染が一気に国内へ拡がってしまう恐れがあり、船室や船内にとどまってもらうという当時の判断はやむを得ず、それ以外の方策はなかったでしょう。 テレビでは、野党の政治家やコメンテイターと云われる人たちが、無責任な批判を繰り返していましたが、新型コロナウイルス感染症という得体の知れない未知の相手を前に、感染のリスクに直面しながら現場で対応に当たっている医師や看護師、自衛隊員、救急隊員、クルーズ船の乗務員、厚労省職員をはじめ、政府関係者の方たちの苦労と努力は並大抵ではなかったと思われます。 現場にいる人たちの苦労や努力を知ろうともせず、協力してコロナウイルスと闘おうという気概もなく、ただ安全な外野席から批判ばかり繰り返している姿を見て、この人たちは、どんな対応をしても批判する人たちなのだろうと、嘆かわしく思われた方もいたに違いありません。 日本と異なる対応を採ったのが、カンボジアで、別のクルーズ船「ウエステルダム号」の乗客の中に、感染者がいる疑いが出たため、各国が入港を拒否し、行き場がなくなり、洋上をただよっていたところを、カンボジア政府が人道的見地から入港を認め、下痢などの症状が出た20人の乗客を検査しても陰性だったため、ほかの乗客も簡単な検査をしただけで下船を認めたことから、当初は称賛を浴びていました。 ところが、その後、下船した乗客の中に感染者がいることが分かり、世界中に拡散する恐れがあるとして、一転して、カンボジア政府の甘い対応に批判が出ていましたが、相手が未知のウイルスだけに、百パーセント正しい対処法を求めるのは無理があり、それぞれの国が、最善と信じる方策によって対処する以外に方法はありません。 いずれにしても、今回の新型コロナウイルスが、我が国にとっても、世界にとっても、今まで遭遇したことのない最強の相手であることは間違いなく、全国民が総力を挙げて立ち向かわなければならない時に、傍観者の立場で、ただ批判を繰り返しているだけでは、人々を不安と混乱に陥れるだけで、終息への展望も希望もまったく見えてきません。 今回、新型コロナウイルスへの一部マスコミの偏った報道姿勢や、無責任なコメンテーターの発言を見て、改めてマスコミの責任と在るべき使命について考えさせられたお方も決して少なくないのではないでしょうか。 不満をもらす一部の乗客優雅なクルーズ船の船旅を楽しんでいた乗客の多くが、お金と時間に余裕の有る人たちであることは間違いありませんが、その人たちが、新型コロナウイルスという不都合な相手に翻弄されて、不自由な生活と感染の恐怖を強いられている姿を見ていて考えさせられたのは、先ほどお話した山奥の一軒家に住む人たちと、どちらが幸せなのだろうかという事です。 テレビを見る限り、山奥の一軒家に住む人たちは、裕福とは無縁の人たちで、毎日、自然の中で、自給自足の生活をしながら暮らしていますが、それでも、それを不幸とも不便とも思っていないだけでなく、テレビ画面からは、この人たちのたくましさと豊かささえ伝わってきます。 それに対し、クルーズ船の乗客の中には、「何故自分はこんな辛い目に逢わなければいけないのか」と、不平不満を抱きながら下船を待っていた人も少なくないのではないでしょうか。 船内にいる一部の人が、船室の様子や、支給されたお弁当の動画をネットに投稿しているのを見ましたが、中には、感謝しているというより、不自由な生活を強いられていることに不満を漏らしているようにしか見えない動画も見受けられました。 また、夫婦連れの場合、どちらかの感染が確認されれば、別々に下船し、違う施設に移動しなければならないケースも考えられますが、「夫婦一緒でなければ困る」と云って不満を漏らす人がいたのには、余りの非常識さに驚かざるを得ませんでした。 いままで優雅で快適な船旅をしてきた人たちにとって、狭い船内に隔離された状況は、不自由極まりなく、不平不満が募るのも当然でしょうが、わたしが強く感じたのは、危機意識の欠如もさることながら、山奥の一軒家に暮らしている人たちとの考え方の違いでした。 合掌
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ムスカリ |
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