桜紋の扉―自殺防止への取り組み、納骨堂「帰郷庵」へのご納骨、供養の意義などについてご紹介します。
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納め札と執着心(1)



治まらぬ詐欺被害


警察庁がまとめた昨年(2014年)一年間の特殊詐欺の被害額が、過去最悪の559億円に上りました。

特殊詐欺とは、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金詐欺に代表される「振り込め詐欺」や、「ギャンブル必勝法情報提供名目詐欺」などを指しますが、被害者の約八割が六十五歳以上の高齢者である事が、この詐欺の特徴と言えましょう。

子や孫を装って騙すケースが多いからですが、これだけマスコミを賑わせ、何度も注意喚起が繰り返されているにも拘らず、被害が減るどころか、増加の一途を辿っている現実を見ると、何とも暗澹たる気持ちになります。

警察庁は、被害に遭わない為、次のような点に気をつけるよう注意を促しています。

・親族を名乗る人物が電話で現金を要求したら、以前から知っている電話番号にかけ直して確認する。
 ・不審な電話や訪問者があれば迷わず警察に相談する。
 ・初対面の人に現金や金融機関のカードを渡さない。
 ・現金をレターパックや宅配便で送らない。
 ・金融機関の職員のアドバイスに耳を傾ける。
 ・お年寄りは、別居の子や孫とも普段から連絡をとっておく。
 ・自分だけは絶対に騙されないと過信しない。

詐欺犯の手口も巧妙化しており、自分は騙されないと思っていても、警察官、弁護士、公務員などの役をする何人もの男女がグループを組んで巧みに誘導してきますから、ついその手に乗ってしまい、気づいた時には手遅れというケースが後を絶ちません。

油断も隙もあったものではありませんが、詐欺グループは、相談する人が周囲にいない一人暮らしのお年寄りをターゲットにして狙ってきますから、常日頃から、いつでも相談出来る人を確保しておくなど、自分一人で物事を決めたり判断したりしない習慣を身につけておく事が大切です。


後を絶たない詐欺事件


今年(2015 年)6月、伊勢丹の元従業員の女性が、会員優待キャンペーンを装って、50人もの人達から、五億円を騙し取る詐欺事件が明るみになり、容疑者の女性が逮捕されました。

伊勢丹の社員だった夫の名刺を見せて信用させたり、手書きのパンフレットを使ったりして、巧みに騙したその手口は悪質という他はありません。

中には、五千万円以上もの大金を騙し取られたお方がいて、唖然としましたが、この容疑者の女性は、今年四月、所沢市の路上で乗用車の中で炭に火をつけ一酸化炭素中毒で自殺した夫のために、炭やライターを購入したとして、夫の自殺幇助の疑いでも取調べを受けています。

すでに夫の保険金約三千万円が支払われており、いまの状況では、夫の死が果たして自殺だったのかどうかも疑わしくなっています。

自殺を偽装した保険金殺人事件が、過去に何件も発生しており、お金の為ならたとえ夫であっても平気で殺す恐ろしい時代ですから、自殺を装った保険金詐取目的の殺人の疑いも拭い切れず、真相は依然闇の中と言わねばなりません。


執着心ほど恐いものはない


このようなお金にまつわる詐欺事件や殺人事件は、今に始まった事ではありませんが、何故このような事件が後を絶たないのでしょうか?

改めて「何故人は簡単に騙されるのか?」と自問自答せざるを得ませんが、煎じ詰めれば、やはり人間の飽くなき欲望と、お金に対する執着心に起因していると言わざるを得ないでしょう。

お金に対する騙す側の執着心の根深さは言うまでもありませんが、騙される側にも、お金に対する執着心がまったくないとは言い切れません。

甘い儲け話を持ちかけられて、簡単に騙されてしまう原因の一つに、お金に対する執着心がある事は間違いなく、詐欺犯たちは、そこを巧みに利用している事を忘れてはなりません。

お金に対する人間の執着心ほど根深いものはありませんが、騙す側は、その執着心をうまく利用して騙そうと狙っていますから、当然、執着心を刺激するあらゆる手立てを講じてきます。

「いまを逃せば、二度とこんなチャンスはありません」「こんなに有利な投資話は他にありません」等々と言って、あの手この手で、人間のお金に対する執着心をくすぐり、欲望を掻き立ててきますから、油断出来ません。

騙す方も褒められたものではありませんが、騙される方にも騙される心の隙があるのではないでしょうか。

お金に対する執着心の深い人ほど、甘い作り話に簡単に騙されてしまうのも、当然と言えば当然かも知れません。

この執着心から自由にならない限り、これからも同じような事件が何度も繰り返される事は言うまでもないでしょう。


騙されない人々


どうすれば、このような被害から身を守る事が出来るのでしょうか?

伊勢丹の元従業員の女性を狂わせたのは、やはりお金に対する執着心ですが、彼女がどれほど巧みな詐術を労しても、騙せない人々がいます。

それは、お金に対する執着心のまったくない人々です。

騙そうとする人間にとって、執着心のない人ほど、手強い相手はいません。無執着の心は、いかなる詐術をも跳ね返す力を秘めているのです。

執着心を離れる為には、どうすればいいのでしょうか?

菩薩様はよく、「無常の域に到達しない限り、本当の救いはない」と仰っておられましたが、無常の域に到達するという事は、無常の道理を悟り、無我、無心、無欲、無所得、無執着の心を確立する事です。

『道歌集』の中に、
  生死(しょうじ)なく 欲も苦もなく我もなく
    無常悟れば 涅槃(ねはん)に帰る
 と詠われているように、無常を悟る事と、無我、無心、無欲、無所得、無執着の心を確立する事は一体の関係にあります。

詐欺の被害に遭わない為には、無常を悟り、無心、無欲、無所得、無執着の心を確立する事が、いかに大切であるかを肝に銘じておかなければなりません。


生に対する執着心


執着心は、お金や物に対してだけではありません。生に対する執着心にも、また根深いものがあります。

菩薩様は、
  生も好(よ)し 死もまた好(よ)きかな桜花
    散れば咲きにと また帰り来る
 と詠っておられますが、この法歌には、執着から解き放たれた人の安らかな心の有様が在りのまま詠われています。

生に対する執着から解き放たれるという事は、「生も好いけれども、死もまた好し」という心境に到達する事ですが、生のみに執着している限り、「死もまた好し」という心境にはなれません。

いつまでも生きていたいという生への執着心は、生と正反対にある死を拒絶します。

勿論、生きる事に対する執着心は、生きる希望や意欲と相まって、人生の様々な苦難を乗り越える原動力でもあり、決して悪い面ばかりではありません。

生に対する執着心が強ければ強いほど、苦難を乗り越える力も強くなり、生きる上での原動力になりますから、その生を否定する死を在るがまま素直に受け入れられないのは当然と言えましょう。

しかし、所詮この世は無常であり、すべてが移り変わっていきます。

どんなに活力旺盛で、生きる力を蓄えた人であっても、遅かれ早かれ、死は必ず訪れます。

中国を統一した秦の始皇帝や、天下を統一した豊臣秀吉でさえ、死を目前にして、為すすべもなく、死出の旅路に赴いたのです。

豊臣秀吉が残した
  露と落ち 露と消えぬるわが身かな
    浪速のことは 夢のまた夢
 という辞世の句を見れば、死を前にして、為すすべもなかった秀吉の心境が痛いほど伝わってきます。

生への執着心が根深ければ根深いほど、死に直面した時の苦しみもまた大きくなるのです。


分別心の罠


生も死も、無常(移り変わり)の中のひとこまであるにも拘らず、何故、生は肯定出来て、死は肯定出来ないのかと言えば、「生は好都合、死は不都合」という分別心が働くからです。

しかし、「生は好都合、死は不都合」という分別の世界は、自分自身が作り出した架空の世界であって、本来あるべき真実の世界には存在しません。

生も死も、無常という真理の中のひとこまであって、そこには好都合も不都合もありません。

大自然はひと時も止まることなく、変化を繰り返し、すべてが、在るべきように生き、在るべきように死んでいるだけです。

木々や草花が、春に芽吹いて花開き、夏に青葉を茂らせ、秋に紅葉し、冬に散ってゆくのは、それが無常の世界に生きるものの定めであり、約束事だからです。

私たちの命は、その約束事の上に与えられているものであって、生まれたからには、成長し、円熟し、やがて衰え、枯れてゆかねばならないのです。

それは、本来そうなっている当たり前の現象であって、好悪や是非の問題ではありません。

それをわざわざ好都合と不都合に分け、あたら作らなくてもよい苦しみの世界を作っているのが、我々人間なのです。

不都合な死を在るがまま受け入れる為には、分別心を捨て、生に対してだけではなく、死に対する悪分別からも自由にならなければなりません。

是非善悪を分別し、好都合なものだけに執着する心を乗り越えない限り、すべてを在るがまま受け入れるのは不可能なのです。

合掌

2015年10月24日

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